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不妊症の漢方治療

状態別漢方治療


排卵異常(稀発排卵、無排卵)の漢方薬治療
→排卵異常(稀発排卵、無排卵)
排卵が数ヶ月に1回になることを稀発排卵、まったく排卵が起こらないことを無排卵といいます。規則正しく排卵があれば規則正しく月経が起こり基礎体温表も2相性になりますから、月経が不規則(稀発月経、無月経)な方や理想的な基礎体温パターンにならない方は排卵に異常がある可能性があります。

排卵異常(稀発排卵、無排卵)の漢方薬治療
排卵異常の原因となる多嚢胞性卵巣症候群、視床下部・脳下垂体・卵巣の機能低下、高プロラクチン血症、などがある方には、周期療法が効果的です。
周期療法は漢方薬の力で身体全体のバランスを整え、正常な月経のリズムを取り戻し、基礎体温表がしっかりした2相性になることを目指す治療法です。排卵異常の原因となる病名が分かっている場合は周期療法の中でそれを治療します。高プロラクチン血症の場合は炒麦芽(いりばくが)芍薬甘草湯を加えたり、多嚢胞性卵巣症候群の場合は桂枝茯苓丸を加えたりします。
その他 肥満、痩せすぎ、激しい運動、精神的ストレスなども排卵障害の原因になります。原因は一つだけでなく、いろいろ合併している場合が多いようです。


卵管通過障害の漢方薬治療
→卵管通過障害
卵管の障害は、女性側の原因として最も多いものです。卵管炎や子宮内膜症などで卵管にダメージを受けると、卵巣から飛び出した卵子をうまくキャッチできなくなったり、卵管の中を通過させて卵子を子宮までスムーズに運べなくなったりすることがあります。クラミジアなどの感染症で卵管炎を起こしている場合は病院で抗生物質や抗菌薬をもらって治療する必要があります。

卵管通過障害の漢方薬治療
漢方薬の中で、活血化瘀薬理気薬に分類されるものは、卵管の通りを改善する働きがありますので卵管の通りが悪い方にはこれらを強化した周期療法をおこないます。
卵管が両側とも閉塞している場合は体外受精を選択することになりますが、体外受精手術の待機中に妊娠される方がたまにいらっしゃいますので、周期療法とタイミング療法は最後まであきらめずに続けてください。周期療法は、良い卵子を育てることや、子宮内膜を充実させて卵子が着床しやすい状態を作るのにたいへん効果があります。体外受精を成功させるためにもぜひ取り入れてほしい方法です。


子宮筋腫の漢方薬治療
→子宮筋腫
子宮筋腫は子宮の筋肉組織が異常に増殖して発生する良性の腫瘍です。頻度の高い病気で小さなものまで含めると30歳代~40歳代の女性のうち20%~40%の方には筋腫があると考えられています。女性ホルモンに反応して増殖するので閉経して女性ホルモンが減少すると自然に小さくなります。子宮筋腫があってもちゃんと妊娠する場合が多いのですが、筋腫のできる場所や大きさによっては受精卵の着床障害や流産をおこす原因になります。
西洋医学の治療にはホルモン療法と手術による治療があります。ホルモン療法は月経や排卵を止めることになりますし、その縮小効果は一時的なものなので不妊症の治療にはあまり向いていません。手術による治療は、筋腫が不妊の原因であることが明確で、他の治療がすべて無効であった場合に不妊専門の医師とよく相談して決めます。
子宮筋腫の漢方薬治療
漢方医学では子宮筋腫は下腹部に発生した瘀血(おけつ)の塊として治療します。一般的に桂枝茯苓丸が選ばれていますが、桂枝茯苓丸をさらに発展させた処方の血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)の方が効果的です。瘀血を治療する漢方薬には血行を良くする生薬が多く含まれているため出血が増える傾向があります。筋腫があって出血が多くなりやすい方は注意して少量から服用する必要があります。これらで出血が増えてしまうような場合は、芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)田七人参(でんしちにんじん)帰脾湯(きひとう)など止血効果のあるものに切り換えて治療します。この他 芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)冠元顆粒(かんげんかりゅう)折衝飲(せっしょういん)婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)等の漢方製剤や、ピクノジェノールと生薬成分の健康食品爽月宝(そうげつほう)などを身体にあわせて選びます。
子宮筋腫のある方の周期療法は基礎体温表の良化を図りながら出血や貧血などの全身症状を改善させて筋腫があっても妊娠することを目指します。筋腫の縮小だけにこだわり過ぎて、体全体のことを忘れてしまわないようにすることが大切です。


子宮内膜症の漢方薬治療
→子宮内膜症
子宮内膜は子宮の内側をおおっている粘膜で、受精卵が着床して胎児へと成長していく場所です。卵巣から分泌されるホルモンに反応して周期的に増殖と脱落を繰り返しています。子宮内膜が脱落する際の出血が月経です。
子宮内膜症とは、子宮内膜と同様な組織が子宮の内側以外の場所で増殖して、月経のたびに出血と炎症を繰り返す病気です。多くは骨盤内の臓器(子宮、膀胱、大腸、小腸、卵巣、卵管やその周辺)に発生し、だんだん強くなる月経痛、月経時の軟便、下痢、排便痛、性交痛などの自覚症状があります。
子宮内膜が子宮の筋肉中に発生した場合を子宮腺筋症と呼び、月経時に出血が多く痛みが強いのが特徴です。卵巣の中に血液がたまると、卵巣嚢胞を形成し、中の血液が古くなったものを卵巣チョコレート嚢胞と呼んでいます。
子宮内膜症によって繰りかえされる出血と炎症は骨盤内の臓器に癒着を生じさせます。卵巣や卵管周辺の癒着はそれだけでも不妊症の原因になりますので、今すぐの妊娠を望んでいない方であっても漢方薬を使って治療しておいた方が良いでしょう。
子宮内膜症の原因は、明確にはわかっていません。先天的なものという説や、一説では月経のときに卵管を通っておなかの中に逆流する月経血にあると考えられています。逆流した月経血には剥がれ落ちた子宮内膜や子宮内膜を発生させる因子が含まれていて、それらにさらされる回数が多くなればなるほど子宮内膜症になる確率が高くなるといわれています。最近の子宮内膜症の増加傾向も、「初経年齢の低下に加えて結婚の高年齢化が進み、第1子を妊娠するまでに迎える月経の回数が増えているため」と説明されています。
子宮内膜症の漢方薬治療
漢方治療(周期療法)の最大のメリットは、月経サイクルを正常に保ちながら治療することです。排卵を抑えたり、月経を止めたりしないので妊娠を目指している方には理想的な方法といえます。副作用も少なく身体に優しい治療法なので、ホルモン療法や手術療法の前にぜひ実行していただきたいと思います。子宮腺筋症、卵巣チョコレート嚢胞も子宮内膜症と同じ方法で治療します。一般的な漢方療法では桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうがくじょうきとう)、がよく使われていますが単独では力不足のことが多いようです。まず主薬として芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)をタイプ(証)によって使い分けます。これに冠元顆粒(かんげんかりゅう)折衝飲(せっしょういん)を組み合わせるとさらに効果的です。出血の多い方は芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)田七人参(でんしちにんじん)、帰脾湯などを使って調節します。月経時の痛みが特に強い場合にピクノジェノールを含有する健康食品の爽月宝(そうげつほう)を併用する方法もあります。周期療法で的確に漢方薬を選んで治療すれば2~3ヶ月の服用で7~8割の方の自覚症状が改善しますが、しばらく続けたほうが良いでしょう。


子宮腺筋症の漢方薬治療
→子宮腺筋症
子宮腺筋症は子宮内膜組織が子宮筋層内に入り込んで発生する病態で、30代後半から多く見られるようになります。強い月経痛と月経過多が主症状で、不妊症や不育症の原因にもなっています。子宮筋腫や子宮内膜症を合併することもあります。幸い妊娠を望む方の多くは30歳前半なので、どうにもならないほど重症になっている方は比較的少ないように思います。
西洋医学の治療は鎮痛剤を使う対症療法とホルモン療法があります。鎮痛剤は出血が多くなりやすいので注意が必要です。ホルモン療法は子宮筋腫や子宮内膜症と同じ月経を止めるやりかたなので、不妊症に向いた治療法とはいえません。また子宮腺筋症は子宮全体が大きく硬くなるため子宮筋腫のように部分的な摘出手術をすることは行われていません。
子宮腺筋症の漢方薬治療
子宮腺筋症の漢方治療(周期療法)も子宮内膜症と同じ方法になります。正常な月経を止めないので妊娠のチャンスを継続できるという大きなメリットがあります。だいたい中程度までの方の痛みや出血は漢方薬だけで改善することが可能です。中程度以上の方はホルモン療法と漢方治療、両方を合わせたやり方を考える必要があります。


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