アトピー性皮膚炎

原因・症状

アトピー性皮膚炎は皮膚表面に発現するアレルギー疾患です。
かゆみが強く慢性に経過する湿疹で皮膚の乾燥あるいは発赤があり、発疹は額、首、わきの下、ひじや膝の内側に出ることが多く、耳切れや搔き傷がある、などの特徴があります。
多くはアトピー素因[気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の既往歴や家族歴、IgE抗体を産生しやすい体質]のある人に生じます。

アレルギーとは

  1. 食物として食べる。
  2. 空気と一緒に吸い込む。
  3. 皮膚に接触する。

などの経路で身体に入った食物や異物に対する過剰な免疫反応のことをいいます。

アレルギーの原因になるものを抗原(アレルゲン)とよびます。抗原となるものには、

  1. 食物性アレルゲンとして卵・牛乳・大豆・食品添加物。
  2. 吸入性アレルゲンにはハウスダスト・カビ・ダニ・花粉。
  3. 接触性アレルゲンには化学物質・金属・化粧品

などがあります。

一般的な治療

現代医学でのアトピー性皮膚炎の治療には原因となるもの(アレルゲン)を除去する方法と、薬を使って痒みを抑える薬物療法があります。アレルゲンの除去はアレルゲンとなるものが多種類に及んで特定できない場合には効果をあげにくく、厳密な除去食の実行は家庭での負担が大きかったり、やり過ぎると栄養障害や発育障害をまねくとの指摘があったりするので、結果的に薬物療法が治療の中心となっています。

薬物療法は、ステロイド外用薬(副腎皮質ホルモン軟膏)が中心で症状の軽重によってステロイド外用薬の強さを変えて使い分けます。顔面や首などステロイドの吸収率が高く副作用が出やすい部分には非ステロイドの外用薬(ブヘキサマック等)や保湿薬(ヒルドイド、ワセリン等)を優先して使用します。最近は非ステロイド性免疫抑制薬のタクロリムス軟膏(市販名、プロトピック軟膏)がさかんに使われています。抗アレルギー内服薬(アレジオン等)と併用される場合も多く、必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などが使われます。

しかし、これらはアトピー体質を治す原因療法ではなく、かゆみや炎症を一時的に抑える対症療法にすぎません。特にステロイド外用薬の場合は症状を劇的に改善してくれますが、使用を中止するとほとんどの場合再燃してしまいます。

さらに、ステロイド外用薬の長期連用には

  1. 皮膚が薄くなる。
  2. 皮膚の感染症にかかりやすくなる。
  3. 皮膚の赤みが増す。
  4. 薬の塗布部分で毛が増える。
  5. にきびの悪化。
  6. 酒さ様皮膚炎

などの副作用があるだけでなく、ステロイド皮膚症と呼ばれている深刻なリバウンドが現れたり、アトピー性皮膚炎自体の難治化をまねく原因にもなりますので使い過ぎにならないように注意しなければなりません。

アトピー性皮膚炎の漢方治療

漢方薬はかゆみや炎症を軽減し皮膚の回復を早めると同時に体質を改善し自然治癒力を強化するすぐれた効果があります。アトピー性皮膚炎を治療する漢方薬は服用する人の体質や皮膚の状態にあわせていろいろな種類がありますが、以下のように大きく3つのグループに分ける事ができます。

主として痒み炎症を抑える処方グループ(体質改善力が少ない)
痒み炎症を抑えながら体質改善をめざす中間的な処方グループ
主として体質改善を目指す処方グループ(痒み炎症を抑える力が少ない)

アトピー性皮膚炎増悪期によく使う漢方薬

赤み、痒みがともに激しく強い熱感がある時期は血熱証、熱毒証、湿熱証の皮膚病として清熱解毒、祛湿の治法を使い主として痒み炎症を抑える処方を選びます。

黄連解毒湯
黄芩3.0;黄連・黄柏・山梔子各2.0
梔子柏皮湯
山梔子3.0;黄柏2.0;甘草1.0
茵陳蒿湯
茵陳蒿4.0; 山梔子3.0;大黄1.0(適量)
銀翹散
芦根15.0;金銀花・連翹各12.0;淡豆豉・淡竹葉・牛蒡子各9.0;薄荷・荊芥・桔梗各6.0;甘草3.0
治頭瘡一方
連翹・朮各4.0;防風・川芎各3.0;忍冬・紅花・荊芥各2.0;甘草1.5;大黄1.0(適量)
荊防敗毒散
荊芥・防風・羗活・独活・柴胡・前胡・枳実・川芎・桔梗・茯苓・連翹・忍冬・甘草・金銀花各1.5;乾生姜1.0
三物黄芩湯
地黄6.0;黄芩・苦参各3.0
涼血清営顆粒
地黄・黄芩・牡丹皮各3.0;芍薬・大黄各2.0;山梔子0.75

アトピー性皮膚炎中間期によく使う漢方薬

赤み、痒み、乾燥はあるが熱感は強くない時期は血燥証、風燥証、血瘀証の皮膚病として養血、祛風、祛瘀などの治法を使い痒み炎症を抑えながら体質改善をめざす中間的な処方を選びます。

乾燥性でかさかさが強い湿疹

温清飲
当帰・地黄・芍薬・川芎各3.0;黄連・黄芩・梔子・黄柏各1.5
当帰飲子
当帰5.0;地黄4.0;芍薬・川芎・蒺藜子・防風各3.0;何首烏2.0;荊芥・黄耆各1.5;甘草1.0
白虎加人参湯
石膏15.0;粳米8.0;知母5.0;人参3.0;甘草2.0
消風散
石膏5;当帰・地黄・朮・木通各3;防風・牛蒡子各2;知母・胡麻・甘草各1.5;蝉退・苦参・荊芥各1

滲出性でじゅくじゅくした湿疹

竜胆瀉肝湯
木通・地黄・当帰各5.0;沢瀉・車前子・黄芩各3.0;竜胆・山梔子・甘草各1.5

アトピー性皮膚炎緩解期によく使う漢方薬

主として基礎的な体質改善を目指す処方を選びます。

知柏地黄丸
知母・黄柏各9.0;熟地黄8.0;山茱萸・山薬各4.0;牡丹皮・茯苓・沢瀉各3.0
玉屏風散
黄耆6.0;白朮4.0;防風3.0
八仙丸
麦門冬0.28・五味子0.19;地黄0.75;山茱萸・山薬各0.37;牡丹皮・茯苓・沢瀉各0.28
補中益気湯
参・白朮各4.0;黄耆・当帰各3.0;柴胡・陳皮・大棗・乾生姜各2.0;甘草1.5;升麻1.0
六君子湯
半夏・茯苓・人参・朮各4.0;陳皮・大棗各2.0;甘草・乾生姜各1.5
柴胡清肝湯
柴胡2.0黄芩・黄連・黄柏・瓜呂根・甘草・桔梗・牛房子・山梔子・地黄・芍薬・川芎・当帰・薄荷・連翹各1.5

その他アトピー性皮膚炎に選ばれる処方

十味敗毒湯
柴胡・桔梗・川芎・防風・茯苓・樸樕・生姜各3.0;独活・荊芥・甘草各2.0
防風通聖散1
滑石3.0;石膏・黄芩・桔梗・甘草・朮各2.0;大黄・芒硝各1.5(適量) 防風・川芎・当帰・芍薬・薄荷・麻黄・連翹・荊芥・梔子・乾生姜各1.2
黄耆建中湯
芍薬6.0;黄耆4.0;桂枝・甘草・大棗・生姜各3.0;膠飴20.0
帰耆建中湯
芍薬6.0;桂枝・大棗・生姜各4.0;当帰3.0;甘草・黄耆各2.0;膠飴20.0
桂枝加黄耆湯
桂枝・芍薬・生姜・大棗各4.0;甘草・黄耆各2.0

アトピー性皮膚炎に有効な薬草

馬歯莧(五行草)、百花蛇舌草、地膚子、土茯苓、羚羊角、紫根、板藍根、生地黄、白茅根

養生(日常生活のアドバイス)

[食養生]

  • 和食を基本にして、野菜を多く摂りましょう。
  • 次の食べ物は摂り過ぎないようにしましょう。
    揚げもの、肉類…とんかつ、てんぷら、から揚げなど
    甘いもの…チョコレート、ケーキ、アイスクリーム、糖分の多いジュースなど
    香辛料の多い物…カレーライス、キムチなど
    加工食品…ポテトチップ、スナック菓子、インスタントフード、ファーストフードなど
    その他(体質に合わせて)…乳製品(ヨーグルト、チーズ、牛乳)、卵、大豆、そばなど

[スキンケア]

  • 肌着はなるべく柔らかい綿を選びましょう。
  • 入浴後は保湿クリームや保湿ローションなどで保護しましょう。

[生活]

  • 規則正しい生活を心がけ、睡眠を充分にとってストレスを溜めないようにしましょう。
  • 清潔な環境を保ちましょう。

漢方薬局からのアドバイス

当薬局ではアトピー性皮膚炎を軽快させる事はそれほど困難なことではありません。年齢やステロイドの使用歴、湿疹の軽重によって差はありますが、体質や症状に合った漢方薬の服用と食生活の改善に真剣に取り組んでいただければ、多くの場合数ヶ月で見違えるようにきれいになり、ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)に頼らなくても十分コントロールできるようになります。

以下に当薬局の取り組み方、考え方を少し書いておきますので来局してご相談される前の参考にしてください。

アトピーで悩まれている方の多くはアトピーを治す物(物質)を探していらっしゃいますが、そこに大きな誤りがあります。アトピー性皮膚炎は物で治すのではなくて治す方法(治し方)で治す皮膚病なのです。

漢方では、アトピー性皮膚炎アトピー素因(内因)を有する人に飲食の不摂生、ストレス、生活環境などの外因が加わって発症すると考えています

飲食物とアトピー性皮膚炎とのかかわりは最も重要なポイントで、漢方で言う病理的産物の湿(湿疹の語源)を発生させる原因である油濃い食べ物や甘いもの、動物性たんぱく質の摂り過ぎは厳禁です。

数千年間、野菜や穀類を中心とした日本人の食生活の大きな変化(高たんぱく食、乳製品、脂肪分の取りすぎ)が免疫過剰状態を引き起こし、アレルギー体質を大量に発生させている原因になっていると考えられます。アトピー性皮膚炎をアレルギー体質そのものから改善させるためには漢方薬治療と同時に高蛋白、高脂肪、高糖分に偏った食生活を改善する努力が必要です。

特に消化吸収力が未熟な乳幼児期は腸管粘膜の透過性が高いので、消化不十分なたんぱく質が体内に浸透しやすい状態にあります。誕生直後から安易に母乳以外の人工乳を与えたり、歯もそろわない早すぎる時期から離乳食を与える事が結果的に食物アレルギーを引き起こし、乳幼児湿疹ひいてはアトピー性皮膚炎の原因となってるケースが多く見られます。これらはアトピー性皮膚炎既往歴やIgE抗体を産生しやすい体質というアトピー素因そのものを作り出すことになりますから取り分け注意しなければなりません。

保湿用の浴剤にする目的で薬草の当帰や地黄だけを指名して買っていかれる方がいらっしゃいますが、いかなる薬草、クリーム、ローション、浴剤、温泉水等であろうとも皮膚に塗布したりお風呂に入れるだけでアトピー体質を治せるもはありません。スキンケアはあくまでもその場の痒みを少しでもやわらげるための補助療法ですから、とりわけ高額な物は必要ありません。そのときの自分の皮膚に合った使用感の良いものを選んでいただければよいと思います。

ほとんどの場合、当薬局で選んだ漢方薬とアドバイスにしたがった生活を心がけていただければ3ヶ月~4ヶ月程度できれいになってきますから治し方も解っていただけるようになります。

初回は治し方の説明に少々時間(30~40分程)がかかりますので、初めて来局される方はご予約して来ていただけるとありがたいです。