にきび(痤瘡)

原因・症状

にきびは皮脂腺からさかんに分泌される皮脂が毛穴に溜まった状態や、そこに細菌が感染して炎症を起こしている状態のことをいいます。

顔の額や頬に集まってでき、胸や背中にもよくできます。額や頬に少量できるくらいは心配ありませんが、大きく化膿したり顔全体に赤く広がっている場合は美容上の問題もあり治療する対象となります。

根本的には、性ホルモン中のアンドロゲンの過剰が大きな原因となっています。
相対的なホルモンの過剰が皮脂腺の分泌亢進と毛孔の閉塞を引き起こし、これによって毛孔内に皮脂の貯留(面疱)が形成されます。毛孔内に貯留した皮脂はそれを栄養にして繁殖する皮膚の常在細菌(アクネ菌…別称にきび菌)の増殖をまねき、アクネ菌が増殖する過程で分泌する酵素(リパーゼ等)が貯留した皮脂から遊離脂肪酸等の刺激物質を産生します。この刺激物質によって毛包壁が破壊されると周辺の細胞に炎症を起こして赤い炎症性のにきびになります。

一般的なにきび(尋常性痤瘡)には以下の3つのタイプがあります。

白にきび(閉鎖面疱)
毛穴が閉鎖し中に皮脂が溜まった状態で炎症や色素沈着が無いので白く見えます。直径は0.1~3mmで小さな物は3~4日で消えることもありますが、大きな白にきびは数週間~数ヶ月にわたる場合があります。
消えなかった白にきびは将来
  1. 黒にきび(閉鎖面疱)か
  2. 赤いにきび(炎症性のにきび)
のどちらかになります。
黒にきび(開放面疱)
毛穴が開いた状態でメラニン色素が集まって黒く見えます。
直径は0.1~3mmで黒にきびから炎症性の赤いにきびになることは非常に少ないと考えられています。
赤いにきび(炎症性にきび)
毛孔内の皮脂に繁殖したアクネ菌(にきび菌)が出す酵素や遊離脂肪酸等の刺激物質により毛包壁が破壊されると、周辺の細胞に炎症を起こして赤い炎症性のにきびになります。

直径5mm以下で皮膚の浅い部分の炎症性にきびを(丘疹、膿疱)、5mm以上で大型の皮膚の深い部分に広がった炎症性にきびを(膿腫)といいます。大型で深い膿腫になると、にきびあと(瘢痕)が残りやすくなります。

その他のにきび

思春期後にきび(思春期後痤瘡)

20歳代~30歳代の女性に多い難治性のにきびで、性ホルモンのアンドロゲンが多くなっているのが原因です。比較的大きな丘疹や膿胞になりやすく頬の部分から下あごにかけた部分に目立って出る特徴があります。

無月経や無排卵などの月経異常のあるときは不妊の原因の一つである多嚢胞卵巣症候群がないかを考慮する必要がありますが、多くの場合は漢方薬で女性ホルモンのバランスを整えることで劇的に綺麗になります。

にきびダニ痤瘡(毛包虫性にきび)

にきびダニ(毛包虫)の過剰増殖が原因で、石鹸を使った洗顔をしない人、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の内服や外用中の人に発症しやすいにきびです。
中央に点状の膿包がある赤みの強い丘疹で、鼻とその周辺、両頬、ひたいに多発します。他に面疱が見られず、一般的な抗生物質治療で充分な効果が得られない場合はにきびダニの可能性があります。

ステロイドにきび・マラセチア毛包炎

皮膚の常在真菌マラセチアによって発生するにきびで温熱の環境で増殖が盛んになるために熱帯地域や高温多湿の環境下でよく見られます。マラセチア菌はステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)の内服や外用中にも増殖しやすくなりその場合はステロイドにきびと称しています。

普通のにきびは白にきび、黒にきび、赤色丘疹、膿胞など、顔の中ににきびの親玉や子分が混在するのですが、この場合は一定の赤い丘疹がそろって出る特徴があります。

ステロイドにきびはステロイドの使用が終了すれば自然に治癒しますが、ステロイドが不可欠な疾患がある場合は中止できないので、一般的なにきびの治療に抗真菌薬(ケトコナゾール等)の外用などを加えて治療します。

酒皶様皮膚炎(ステロイド酒皶)

アトピー性皮膚炎の治療などでステロイド外用剤を長期に使用した場合に生じる副作用が原因の皮膚炎です。にきび様の赤い丘疹や膿疱に加えて紅斑、鱗屑(表皮の細かい剥がれ)が見られ、強い痒みや灼熱感があるのが特徴です。

ステロイド外用剤を中止すると悪化するので、やむなく使用を続けるという悪循環になっている場合が多く見られますが、漢方薬を使ってステロイドの使用を減量していくことで治療することができます。

にきびの漢方治療

外用薬

にきびの初期、面疱(コメド)の段階では洗顔とイオウ製剤(イオウカンフルローション)でスキンケアを心がけて炎症性にきびに移行するのを防ぎます。すでに大型の深い炎症性にきびになってしまっている部分は抗生物質入りの軟膏を使って治療します。

西洋医学ではこれらに抗生物質の内服薬を加えて治療しますが、これによってにきび体質の改善ができるわけではなく抗生物質の長期服用は副作用(肝・腎障害、血小板減少等)の心配がありますので、できるだけ短期間の使用にとどめておくべきでしょう。

漢方薬

漢方薬はにきびの炎症を抑えると同時に、にきびが出来る体質そのものをの改善をします。かなり重度のにきびであってもその人に合った漢方薬を選ぶ事で優れた効果を上げることが多く、にきび治療は漢方の得意分野と言えます。

にきび以外には身体に異常のない人には清上防風湯がよく効きます。肝胆湿熱タイプには竜胆瀉肝湯、顔面の赤みやにきびの炎症が強い人は五味消毒飲や黄連解毒湯を併用した方がよいでしょう。にきびが化膿しやすい体質の人には十味敗毒湯や荊防敗毒散を用います。

皮膚が乾燥しやすい人やアレルギー体質のある方は荊芥連翹湯、乾燥が強かったり色沢が悪い場合は温清飲を服用します。

女性の場合、にきびの状態はホルモンのバランスにかなり影響を受けます。一般的に卵胞ホルモンの分泌が盛んな低温期はきれいになり、黄体ホルモンの分泌が盛んになる高温期に悪化する傾向があります。

思春期後にきびのように女性ホルモンの分泌が不充分で月経不順がにきびの原因になっているような場合は婦宝当帰膠などの月経不順改善の漢方薬だけでも2~3ヶ月で劇的に改善する事がよくあります。精神的なストレスを受ける事によって悪化しやすい人は抑肝散や加味逍遥散を併用します。

特に強い月経痛があったり、月経の色が黒ずんだり塊が混じる人は瘀血があると考えられ、この場合は瘀血を取る血府逐瘀丸や冠元顆粒、桂枝茯苓丸加薏苡仁等を併用します。瘀血を取るこれらの処方はにきびの痕が暗紫色になって残っているのを早く消したい時にも服用します。

この他にも清熱解毒の薬草に分類される白花蛇舌草や五行草(馬歯莧)を組み合わせたり、抗炎症作用のあるサージオイルをにきび痕の外用や内服に使うなど有効な方法が多々あります。

養生

日常生活上の増悪因子がかなりあります。よく知られているものでは、化粧、睡眠不足、便秘、ストレス、偏食、不規則な食生活等があります。女性の場合は月経不順の対策が不可欠です。食事のメニューは野菜類を多く取るように心がけて砂糖や脂肪分の取りすぎに注意します。にきびを予防するために、患部を清潔にし、睡眠時間を十分に取り、規則正しい生活を心がけてください。