脳の血管が詰まって脳細胞への血液供給が止まったり、血管が破れて血管外に出た血液が脳組織を圧迫したりして脳が正常に機能しなくなる状態を総称して「脳血管障害」といいます。
その中で、突然の意識障害など、急激に起こる脳の障害のことを「脳卒中」と呼んでいます。脳卒中には血管が詰まる「脳梗塞」と、血管が破れて出血する「脳出血」、「くも膜下出血」があります。さらに脳梗塞は、血管の詰まった場所に血栓が形成された「脳血栓」と、心臓や頸動脈などにできた血栓が剥がれて脳の血管に詰まる「脳塞栓」に分類されます。
脳血管が詰まってなんらかの症状がでた後24時間以内に回復する場合を「一過性脳虚血発作」、3週間以内に回復する場合を「可逆性虚血性神経障害」といいます。
栄養状態が悪かったころは高血圧で血管が破れる脳出血が多かったのですが、現在は食生活の欧米化によって肥満、糖尿病、高脂血症などと関連の強い脳梗塞の割合が増加しています。最近の脳卒中は脳梗塞65%、脳出血24%、くも膜下出血11%となっています。
「脳卒中」の最大の原因は「心筋梗塞」と同じ動脈硬化です。動脈硬化は血管の老化現象でもあって中年以降は誰でも進行しているのですが、肥満、高血圧、高血糖、高脂血症など動脈硬化の危険因子が揃うと進行が著しく早まります。特に肥満は高血圧、高血糖、高脂血症を招く原因にもなっていますから注意が必要です。
そのほかの脳卒中の原因としては、心臓疾患、不整脈、高尿酸血症(痛風)、飲酒、喫煙、ストレス、脱水症などがあります。
症状は脳の損傷を受けた部分や程度によって異なり、突然に現れる意識障害、強烈な頭痛、片側だけに現れる麻痺、言語障害、失語症などがみられます。小脳の梗塞では、めまい、歩行困難など平衡感覚に支障が出ます。
脳卒中の発生直後(6時間以内)であれば、血流回復によって脳の損傷を減らせる可能性があります。そのほか脳の浮腫を軽減させたり、脳を保護する治療が行われます。脳出血による血腫を外科的に取り除く措置が行われる場合もあります。
その後は再発予防とリハビリが治療の中心になります。再発予防の薬物療法では心臓疾患や心房細動がある場合にはワーファリン、その外アスピリン、チクロピジンなどが処方されます。
漢方では突然に発症して意識障害や半身不随、言語障害を起こす病気を「中風」あるいは「卒中」とよんでいます。
脳卒中の後遺症には半身不随や手足の無力の他に、言語障害、しびれ、むくみ、意欲低下、全身的な衰えなどが見られます。
漢方では全身の血流を改善しながら元気を回復させて、しびれなどの後遺症を除去し、リハビリによる身体機能の回復を援護すると同時に、再発を予防する処方を選びます。
脳卒中後遺症の代表的な処方には中医学の補陽還五湯「黄耆20.0;桃仁4.0;当帰・赤芍・紅花各3.0;川芎・地竜各2.0」があります。
日本では補陽還五湯は手に入りませんが市販されている生薬製剤の「冠元顆粒」「麦味参顆粒」「地竜」を組み合わせれば、補陽還五湯と似た処方になります。
高血圧を伴い、めまいや耳鳴りがあり、赤ら顔で時に目が赤く、口が渇き、あるいは苦く、イライラする場合には釣藤散や七物降下湯、のぼせやほてりがある場合は瀉火補腎丸を服用します。
寝つきが悪く不眠がちで、イライラしやすく食欲が無い、舌の苔が黄色などの症状が見られる場合は、星火温胆湯を用います。
疲れやすく、食欲不振、冷えに弱い、意欲低下など、全身の衰えが目立つ場合は参馬補腎丸や鹿茸大補丸、補中益気湯、十全大補湯などで体力を回復させます。
脳卒中のことを漢方では中風とよんでいます。「中風」をさらに意識障害の有無で「中経絡」と「中臓腑」に分けており、それぞれに大秦艽湯や安宮牛黄丸という処方があります。
しかし、脳卒中の急性期に漢方薬を飲むこと自体が現実的ではなく、急性期は一刻も早く脳神経専門の施設にかかることをおすすめします。
ここでは脳卒中の後遺症でよく見られる「しびれ」「意欲低下」「全身的な衰え」などの改善や動脈硬化の予防、脳卒中の再発防止など漢方薬の得意分野を紹介させていただきました。
漢方では血行障害のことを「瘀血」とよんで重要な治療対象としています。「瘀血」は現代医学でいう脳梗塞や心筋梗塞など直接の循環障害だけでなく、動脈硬化、高脂血症、血管収縮、鬱血などが引き起こす血液の循環障害すべてを表した言葉です。
「瘀血」の治療にはさまざまな薬草、漢方薬が使われますが、その中でも、漢方製剤の「冠元顆粒」は安全性も高く、あらゆる循環器疾患の予防と治療の特効薬としてお勧めできます。